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【直腸異物】

  • 株式会社 SALES AGENCY
  • 2023年11月30日
  • 読了時間: 3分

今日は直腸遺物の話をします。いや、失礼、異物でした。



直腸異物と診断される病気は、「直腸の中に、あってはならないものが入って取れなくなってしまった」という病態をいうものです。


直腸の中に、便があるのは当たり前です。時に便が硬くなり、なかなかでなくなってしまうことはありますが、これは、異物とは呼びません。糞石とよび、異物とは、一線を画します。



なんというか、つまり、直腸の中に入ってしまったものには、実にいろいろなものがあります。たいていは「大人のおもちゃ」です。


私自身が経験したなかで、記憶に残っているのは、2症例で、ものは小型マッサージ器です。お二方とも、男性の方でした。(きっと、もっと多くの症例を経験していると思いますが、いちいち記憶していないので、忘れてしまっているのだと思います。)



さて、近頃経験した男性の場合は、長さ、17cm、太さ38mmのピンク色のマッサージ器でした。痔の薬を直腸の奥まで入れようとして、マッサージ器をつかい、誤って、そのすべてを腸の中に入れてしまった方です。幸い、電池をいれず、勿論、スイッチも入っていなかったので、大事には至りませんでした。この病気の場合、症状が出なければ、すぐに来院することは少なく、その方も、2日後に来院されました。おそらく、自然排出されるのを待っていたのだろうと思います。残念ながら、自然排出されず、(されるはずなく、)来院されました。まことに、すまなそうな表情をしていましたが、たしかに、さぞかし、悔やんだことでしょう。痔の薬を入れようとしたのに、誤って、17cmすべてを入れてしまって取れなくなってしまったのですから。変に誤解されたくなかったので、専門医のわたしの元に来院されたようです。幸い、麻酔をかけた段階で、肛門から取り出すことに成功し、手術をせずにすみましたが、場合によっては、手術して取らなければならないこともあります。



報告例では、スイッチが入ったまま、直腸の中に入ってしまった例では、死亡例もあるようですから、出来るだけ、スイッチを切っておかなければいけません。



直腸に座剤を入れるときには、誰でも経験すると思いますが、最初は、なかなか直腸の中に、薬は入りません。しかし、あるところまで、押し込んでやると、ふっと、自然に入り込んでしまうところがあります。その方も、なかなか入らなくて、押し込んでも、押し戻されるので、押し込んでいたら、あるところで、すっと入り込んでしまったのではないかと思います。これは、肛門の括約筋の自然な弛緩反射で、これが起こった瞬間には、もう、公開しても後の祭りです。入り込んでしまって、引き戻すことが出来ません。生理的な反射とは怖いものです。



ところで、このピンクのマッサージ器のケースには、「体の疲れた部位に当てて、マッサージをしてください」と、使用説明が書かれてありました。しかし、肛門で使う場合の注意事項は書いてありません。もし、肛門が疲れていて、使ったとすると、(たいていの場合は、肛門がある種の疲労を伴ったために使われるのであろうと思うのですが、今回の場合は、座剤を入れるために使ったということで、目的外使用ですから、製造メイカーには責任はありませんが)この反射に対する注意を消費者に喚起していないのは、裁判になれば製造主が負けるのかもしれません。



今回は、直腸遺物の話をしました。いや、異物でした。でも、遺失物であることは確かですね。

【the web 大腸・肛門・骨盤底疾患スペシャル】

 
 
 

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